星が見えないガスの雲、暗黒物質が大半の「暗い銀河」候補か 中国の電波望遠鏡で発見
中国科学院国家天文台などのチームが、電波望遠鏡FASTで星の光が見えない水素ガスの雲「J1351+0039」を見つけたとする論文を公開した。重さの大半を暗黒物質が占める「暗い銀河」の有力な候補だが、ごく暗い小さな銀河の可能性も残る。
サイエンス- ●中国のFASTで、星が見えない水素ガスの雲「J1351+0039」を発見
- ●重さの大半は暗黒物質と見積もり、星のない「暗い銀河」の有力候補
- ●ごく暗い小さな銀河の可能性も残り、宇宙望遠鏡での確認が必要
見えない暗黒物質や、銀河がどう生まれたかに迫る研究だ。宇宙の成り立ちに関心がある人向けの話で、暮らしにすぐ関わるものではない。
論文は、ハッブルやジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で深く観測し、本当に星が無いかを確かめる必要があるとしている。
中国科学院国家天文台などの研究チームは、星の光が見えないガスの雲「J1351+0039」を見つけたと論文で報告した。重さの大半を暗黒物質(光を出さない正体不明の物質)が占める「暗い銀河」の有力な候補だという。論文は2026年9月24日に論文の公開サイト「arXiv」に載り、10月21日に第2版が出た。欧州の天文学誌「Astronomy & Astrophysics」に載ることが決まっている。
何が見つかったのか
雲は、中国・貴州省にある口径500メートルの電波望遠鏡「FAST」が、空を広く調べたデータから見つかった。チームは2026年7〜8月に、FASTで3回観測し直した。距離は約1200万光年(論文では3.6メガパーセク)、半径は約9100光年と見積もる。
水素ガスの重さは、太陽の約45万倍だ。一方、可視光で空を写した「DESI Legacy Survey」の画像には、星の光が写っていなかった。星があるとしても、重さは太陽の約12万倍より軽いという。
なぜ「暗い銀河」の候補なのか
宇宙では、先に暗黒物質の固まりができ、そこにガスが集まって星が生まれたと考えられている。ただ小さな固まりでは、宇宙に満ちる紫外線でガスが温められ、星ができないままになりうる。研究者はこれを「RELHIC」、または「暗い銀河」と呼ぶ。
チームはガスの動きから、見えない分も含めた雲の重さを太陽の約1億3000万倍と見積もった。ガスなどふつうの物質の約200倍にあたる。見えない重力の源が無ければ、雲は約2億4000万年でばらばらになるという。形はほぼ球で、主にガスの圧力で形を保つ。これも理論の予想と合う。
先に見つかった「Cloud-9」との違い
2026年1月には、ESA(欧州宇宙機関)などが、渦巻銀河M94のそばの雲「Cloud-9」について発表した。ハッブル宇宙望遠鏡で星が無いと確かめ、この種の天体の初めての例とした。記事の上の画像は、Cloud-9の位置を示したものだ。
論文によると、Cloud-9などは近くの大きな銀河の影響を受けている。J1351+0039は、まわり約65万光年に知られた銀河が無い。ガスの尾などの跡も無く、銀河からちぎれたガスではないとみる。論文は、これまでで最も条件がそろった、孤立した候補だとしている。
分かっていないこと
論文は、星が本当に無いとまでは言い切っていない。ごく暗い小さな銀河である可能性も残る。小さな銀河「しし座T」ほどのまばらな星なら、今回の画像には写らないという。確かめるには、ハッブルやジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で深く観測する必要がある。わずかに回っている点も、本来は理論の予想に無い動きだ。
日本ではどうなるのか
この研究に日本の機関は加わっていない。論文は英語で、arXivで誰でも無料で読める。
まとめ
J1351+0039は、星の光が見えず、重さの大半を暗黒物質が占めるとみられるガスの雲だ。銀河になれなかった「暗い銀河」なら、暗黒物質を調べる手がかりになる。ただし、星が本当に無いかは、これからの観測しだいだ。暗黒物質の別の研究は、銀河団「エル・ゴルド」の記事で紹介している。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月23日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。