土星の衛星エンケラドスの生命の手がかりは「塩の結晶」の中に? 英国の研究、凍るときに海の水を閉じ込めると実験で確認
英国の放射光施設Diamond Light Sourceなどの研究チームは、土星の衛星エンケラドスにあると考えられている塩の結晶「ナトロン」が、凍って育つときに周りの水を小さな袋のように閉じ込めることを、実験で確かめた。氷の下の海の成分や、もし生命がいればその痕跡を残す「入れ物」になりうるという。論文は2026年10月6日に学術誌に載った。
サイエンス- ●英国のDiamond Light Sourceなどのチームが、エンケラドスの海に似た水を凍らせ、強いX線で観察した。炭酸ナトリウムの鉱物「ナトロン」の結晶が、育つときに周りの水を閉じ込めた
- ●約3,800粒のうち、水を閉じ込めていたのは約3%だったが、いちばん大きい29粒はすべて閉じ込めていた。大きい結晶ほど、海の水の手がかりを残しやすい
- ●研究チームは、将来の探査機は地表のナトロンを見分ける力を持ち、噴き出したばかりの新しい堆積物から試料を取るべきだと提案している。ただ、生命の痕跡まで残せるかはまだ試していない
宇宙の生命探しは、遠い話に思えるが、地球の塩の結晶の研究で得た知識が、別の星の探査の作戦づくりに生かされていることが分かる。将来の探査の計画を読むときの手がかりになる。
エンケラドスは、米航空宇宙局(NASA)の大型の探査や、欧州宇宙機関(ESA)の大型の計画の有力な行き先になっている。研究チームは、近赤外線で地表のナトロンを見つけられる機器を、探査機に積むべきだとしている。
英国の放射光施設Diamond Light Sourceなどの研究チームは、土星の衛星エンケラドスにあると考えられている塩の結晶「ナトロン」が、凍って育つときに周りの水を小さな袋のように閉じ込めることを、実験で確かめた。氷の下にある海の成分や、もし生命がいればその痕跡を残す「入れ物」になりうるという。論文は2026年10月6日、学術誌「Communications Earth & Environment」に載った。
エンケラドスとは
エンケラドスは土星の衛星で、何kmもの厚い氷の下に海がある。論文によると、生命に欠かせない3つのもの、液体の水、エネルギーのもと、生命をつくる主な元素(炭素、水素、窒素、酸素、リン、硫黄)がそろっており、NASAとESAの大型の探査の有力な行き先になっている。
Phys.orgによると、南極の近くの割れ目からは、水蒸気や氷の粒が噴き出している。この噴き出したものを調べれば、氷を掘らなくても、下の海の様子を探れる。問題は、どの物質に、いちばん役に立つ手がかりが残るかだ。
何をしたのか
研究チームは、エンケラドスの海に似せた、塩化ナトリウムと炭酸ナトリウムを含む水を冷やして凍らせた。そのようすを、強いX線で立体の画像に撮り(CTの撮影)、X線の散らばり方で、できた鉱物の種類を調べた。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 水を閉じ込めた鉱物 | ナトロン(炭酸ナトリウムの十水和物、Na2CO3・10H2O) |
| 調べた粒の数 | 約3,800粒 |
| 水を閉じ込めていた粒 | 約3% |
| いちばん大きい粒(29粒) | すべてが水を閉じ込めていた |
| 使った水の濃さ | 探査機カッシーニの観測からの見積もりの約5倍 |
ナトロンの結晶は、育つときに周りの水を取り込んで閉じ込めた。こうした結晶の中の小さな水の袋を「流体包有物」と呼ぶ。大きい結晶ほど水を閉じ込めやすく、閉じ込めた水の量も多かった。袋の1つ1つが、閉じたときの水の見本を残す入れ物になりうる。
地球では、昔の塩の堆積物の結晶の中の水の袋に、微生物の細胞が残っていた可能性を示した研究がある。ただ、今回の実験は、ナトロンが水を閉じ込めることを示しただけで、生命の痕跡まで閉じ込めて保てるかは試していない。研究チームは、周りの鉱物が、痕跡を傷める放射線から守る可能性があるとしている。
どこを探せばよいのか
Phys.orgによると、ナトロンは、エンケラドスの地表ではまだ確かめられていない。研究チームは、将来の探査機に、地表のナトロンを見分けられる近赤外線の機器を積むべきだと提案している。
試料を取る場所としては、噴き出し口の近くの、新しくたまった堆積物が有望だという。大きい粒はゆっくり冷えるので結晶が育ちやすく、塩の多い大きな粒は噴き出し口の近くに落ちやすいと考えられる。ナトロンは極寒では安定するが、噴き出し口の近くの比較的あたたかい場所では、結晶の中の水が少しずつ抜けていく。新しくたまった結晶が、海から届いた中身と、水の袋の両方を残している可能性が高い。
かんたんに言うと
エンケラドスの氷の下の海の水は、噴き出して地表で凍る。そのとき、ある種類の塩の結晶が、海の水を小さなカプセルのように閉じ込めることが、実験で分かった。将来の探査機がこのカプセルを見つけて調べれば、海の成分や、もしかすると生命の痕跡がわかるかもしれない。
日本では
日本の研究ではないが、エンケラドスのような氷の衛星の海は、生命探しの大きなテーマだ。今回の論文は、将来の探査で「どこで、何を取るか」を考える材料になる。
まとめ
英国のDiamond Light Sourceなどのチームは、エンケラドスにあると考えられる塩の結晶ナトロンが、凍るときに周りの水を閉じ込めることを実験で確かめた。大きな結晶ほど水を閉じ込めやすく、海の成分の記録になりうる。研究チームは、将来の探査で地表のナトロンを見分け、新しい堆積物から試料を取るよう提案している。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月23日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。